社会保険労務士(社労士)は、「人事」「労務管理」「社会保険」に関するスペシャリストです。
自分の会社の労働環境や社会保険について興味を持ち、社会保険労務士(社労士)という資格の存在を知ったという方は少なくありません。
社会保険労務士(社労士)になるには、他の資格と同じように試験に合格する必要があります。
試験に合格して初めて、社会保険労務士(社労士)を名乗って業務ができるわけですね。
この記事では、社会保険労務士(社労士)の試験制度等について詳しくまとめましたので、ご一緒に確認したいと思います。
「一体どのような試験が行われているの?」「試験の内容や範囲はどのくらいなの?」と疑問を抱えている方は、一度目を通しておきましょう。
社会保険労務士(社労士)の試験制度について徹底解説!
社会保険労務士(社労士)の試験内容や試験科目
社会保険労務士(社労士)の試験内容は、労働保険と社会保険の2つのジャンルに大きくわけられます。
実生活に直結する知識を身につけられる資格ですので、法律に関する知識が全くない人でも馴染みやすいですよ。
社会保険労務士(社労士)の学習をしていると、次のような身近に感じる疑問を解決できます。
- いきなり会社をクビにされてしまったけど、どうすれば良いの?
- 老後にどのくらいの金額の年金をもらえるの?
- うちの会社は労働時間が長いけど何か決まりはあるの?
- 就職時や退職時にはどのような手続きをすれば良いの?
法律関係の知識は必須ですが、「憲法」「民法」「商法」など法学部で学ぶような法律ではありません。
健康保険法や国民年金保険法を中心に、労働と保険に特化した法律の知識を社会保険労務士(社労士)の試験では問われます。
具体的に社会保険労務士(社労士)の試験科目を見ていきましょう。
<労働関係法令>
労働基準法:
労働安全衛生法:
労働者災害補償保険法:
労働保険の保険料の徴収等に関する法律:
雇用保険法:
<一般常識>
労務管理その他の労働に関する一般常識:
社会保険に関する一般常識:
<社会保険関係法令>
健康保険法:
国民年金法:
厚生年金保険法:
仕事や生活に関わりが深い法律を勉強するため、憲法や民法と比べてみると社会保険労務士(社労士)は遥かに勉強しやすいのが特徴です。
しかし、社会保険労務士(社労士)の試験範囲はかなり広くなっています。
初めて社会保険労務士(社労士)の学習を始める方は右も左もわからない状態ですので、独学よりかはスクールへの通学や通信講座の利用がおすすめです。
社会保険労務士(社労士)の試験形式
社会保険労務士(社労士)の試験形式は、次のように選択式試験と択一式試験の2つに大きくわけられます。
- 選択式試験は5つの空欄に当てはまる語句や文章を20個の選択肢から選んで回答する
- 択一式試験は5つの文章の中から1つを選んで回答する
いずれの試験もマークシート形式ですので、条文を丸暗記しなくても大丈夫です。
しかし、択一式試験で得点しても選択式試験の得点不足で不合格になる人は多いため、両方の試験の対策をきちんと練らないといけません。
次に社会保険労務士(社労士)の試験形式別で、出題科目について見ていきましょう。
・労働基準法および労働安全衛生法(1問)
・労働者災害補償保険法(1問)
・雇用保険法(1問)
・労働管理その他の労働に関する一般常識(1問)
・社会保険に関する一般常識(1問)
・健康保険法(1問)
・厚生年金保険法(1問)
・国民年金法(1問)
※選択式は40点満点(1問につき5つの空欄があり、空欄1つ=1点)
・労働基準法(7問)
・労働安全衛生法(3問)
・労働者災害補償保険法(7問)
・雇用保険法(7問)
・労働保険徴収法(6問)
・労働管理その他の労働に関する一般常識(5問)
・社会保険に関する一般常識(5問)
・健康保険法(10問)
・厚生年金保険法(10問)
・国民年金法(10問)
※択一式は70点満点(1問につき1点)
社会保険労務士(社労士)は試験範囲がとても広いため、効率良く学習して知識を頭に入れる必要があります。
社会保険労務士(社労士)の試験時間
社会保険労務士(社労士)の試験時間は、下記のように午前の部と午後の部にわかれているのが特徴です。
<選択式試験>
- 着席は10時(受験者集合・着席)
- 試験時間は10時30分~11時50分(80分間)
<択一式試験>
- 着席は12時50分(受験者集合・着席)
- 試験時間は13時20分~16時50分(210分間)
途中で1時間の休憩がありますが、社会保険労務士(社労士)の試験はトータルで290分間も集中力を持続させないといけません。
知識の習得に加えて試験回答の時間配分も合格のために必須ですので、模擬試験を通じて解く科目の順番やマークするタイミングをしっかりと押さえておいてください。
社会保険労務士(社労士)の試験の合格基準は?
社会保険労務士(社労士)の試験科目や試験内容だけではなく、合格基準がどのくらいなのか気になるところですよね。
合格基準は難易度によって調整されることがありますが、令和3年度(第53回)の社会保険労務士(社労士)の試験は次の2つの条件を満たした者を合格としています。
- 選択式試験は総得点24点以上(40点満点)、かつ各科目が3点以上(選択式の「一般常識(労務)」は1点以上、「国民年金法」は2点以上)
- 択一式試験は総得点45点以上(70点満点)、かつ各科目が4点以上
総得点の目安を見てみると、60%~70%の得点で社会保険労務士(社労士)の試験に合格できますよ。
ただし、社会保険労務士(社労士)の試験の合格基準には、各科目の得点も含まれていますので注意しないといけません。
基準点に達しない科目が1つあるだけで不合格になるので、社労士試験に合格するためには、苦手科目を作らないことが重要です。
※なお、科目ごとの基準点に対して救済措置が取られることがあります。
社労士試験の救済措置については、次の記事をご覧ください。
社会保険労務士(社労士)の試験日程や申し込み方法
社労士試験の申し込みの期間や試験日、合格発表は以下のとおりです。
社労士試験の申し込み期間 | 毎年4月中旬から5月末日まで |
社労士試験の試験日 | 毎年8月の第4日曜日または第5日曜日 |
合格発表日 | 毎年10月末~11月初旬頃 |
社会保険労務士(社労士)の試験の申し込み方法は、次の2つから選ぶことができます。
- 郵送での申し込み:簡易書留郵便で全国社会保険労務士会連合会の試験センターに郵送する
- 試験センターの窓口での申し込み:平日の9時30分~17時30分までに、全国社会保険労務士会連合会試験センターまたは都道府県社会保険労務士会の窓口に足を運んで申し込む
試験センターや都道府県社会保険労務士会に足を運ぶのが面倒な方は、郵送で社会保険労務士(社労士)の試験の申し込みを行いましょう。
郵送での申し込みの流れは、下記のように難しくありません。
- 往信用封筒に82円切手を貼って試験センターに宛名と自分の住所や氏名を記入する
- 返信用封筒に140円切手を貼り、住所や氏名を書いて往信用封筒に入れて投函する
- 試験センターに到着した翌営業日に受験案内や申込書が自宅に届く
自宅に届く社会保険労務士(社労士)の受験案内には、次の5点の内容物が入っています。
- 受験案内
- 社労士受験申込書 科目免除申込書(OCRシート)
- 受験手数料払込用紙(4票式)
- 実務経験証明書用紙
- 受験申込用封筒
書類の中に必要事項を記入し、全国社会保険労務士会連合会試験センターに簡易書留郵便で郵送すればOKですね。
もし社会保険労務士(社労士)の試験の申し込みで必要な書類が不足している場合は、試験センターに連絡してください。
社会保険労務士(社労士)の試験会場
社会保険労務士(社労士)の試験会場は全国各所に用意されています。
受験の申込書に希望試験地や希望試験会場を記入する欄がありますので、自宅から最も近い場所を選びましょう。
ここでは、東京都の社会保険労務士(社労士)の試験会場についてまとめてみました。
- 明治学院大学 白金キャンパス(港区白金台1-2-37)
- 日本大学法学部(千代田区三崎町2-3-1)
- 日本大学経済学部(千代田区三崎町1-3-2)
- 東京国際展示場東京ビッグサイト(江東区有明3-21-1)
- 目白大学新宿キャンパス(新宿区中落合4-31-1)
その他の場所についても、「北海道は札幌コンベンションセンター」「山形県は山形ビッグウイング」「埼玉県は獨協大学」「千葉県は幕張メッセ国際展示場」「神奈川県は青山学院大学 相模原キャンパス」「愛知県は名古屋工業大学」「福岡県は九州産業大学」と定められています。
ただし、試験会場の割り当ては申し込み受付順ですので、必ずしも自分の希望が100%反映されるわけではありません。
どの会場で社会保険労務士(社労士)の試験を受けるのかは、8月上旬に送付される受験票で判明します。
全会場が定員に達した場合でも、試験センター指定の別会場が増設されますので安心してください。
社会保険労務士(社労士)の試験の合格率は低い!
社会保険労務士(社労士)の試験は、他の国家資格の試験と比べてみると合格率が低いのが特徴です。
受験者は毎年4万人前後ですが、合格率は6%~9%程度しかありません。
平成21年度~令和3年度の社会保険労務士(社労士)の試験で、合格率がどう推移しているのか見ていきましょう。
平成21年度:7.6%
平成22年度:8.6%
平成23年度:7.2%
平成24年度:7.0%
平成25年度:5.4%
平成26年度:9.3%
平成27年度:2.6%
平成28年度:4.4%
平成29年度:6.8%
平成30年度:6.3%
令和元年度 :6.6%
令和2年度 :6.4%
令和3年度 :7.9%
一番難易度が低い年が平成26年度の9.3%、最も難易度が高い年が平成27年度の2.6%です。
平成26年度の社会保険労務士(社労士)の試験が易しかったため、平成27年度の試験を難しくしすぎて合格者数が少なくなったのかもしれません。
どの年度にしても、社会保険労務士(社労士)の合格率の低さは下記のように他の国家資格と比較してみればわかります。
<2017年の試験の合格率>
- 司法書士試験:4.07%
- 社会保険労務士試験:6.8%
- 土地家屋調査士試験:8.69%
- 弁理士試験:8.9%
- 公認会計士試験:11.1%
- 行政書士試験:15.72%
- 税理士:17.0%
- 中小企業診断士:19.4%
- 司法試験:25.9%
司法書士試験に次いで難しいのが社会保険労務士(社労士)です。
社会保険労務士(社労士)の試験の難易度が高いのは、「受験資格が定められている」「試験範囲や試験科目が広い」「勉強時間の確保が難しい」などいくつかの理由が考えられます。
※社会保険労務士(社労士)の試験の難易度が高いのか低いのかは、こちらのページでも解説しています。
簡単に合格できるような試験ではありませんので、社会保険労務士(社労士)の資格を取得したい方はしっかりとスケジュールを立てて継続的な学習に取り組んでください。
まとめ
社会保険労務士(社労士)の試験内容や試験科目、試験日程や合格率についておわかり頂けましたか?
社会保険労務士(社労士)の試験範囲は労働保険と社会保険の2つのジャンルですが、とても範囲が広く設定されていますね。
試験時間もトータルで290分間と非常に長く、毎年の合格率が6%~9%と低いのが難しいと言われる何よりの証拠です。
その代わりに社会保険労務士(社労士)の資格を取得すると、「スキルアップに繋がる」「企業内社労士として活躍できる」「実生活で役立つ」といったメリットがありますので、計画的に試験勉強に取り組んでみてください。
■
社労士の試験制度や試験対策、勉強法などは、下記も参考にしてください。
<試験制度 総合>
<データや統計など>
<試験対策・勉強法(総合)>
<おすすめテキスト・問題集など>
<科目別 試験対策・勉強法>
- 労働基準法【人気!】
- 労働安全衛生法
- 労災保険法
- 雇用保険法
- 労働保険徴収法
- 労働に関する一般常識
- 健康保険法【人気!】
- 国民年金法【人気!】
- 厚生年金保険法【人気!】
- 社会保険に関する一般常識