社労士試験

社労士の雇用保険法は難しい?勉強方法や対策・出題傾向まとめ

今回は、雇用保険法に関する記事です。

会社勤めをしているサラリーマンや転職の経験がある方にとっては、社会保険労務士(社労士)の試験科目の雇用保険法は身近に感じる法律です。

雇用保険は雇用に関する総合的な機能を有する保険で、労働者を雇用する事業は原則として強制的に適用されます。

1947年(昭和22年)に失業した労働者の生活の安定を図る目的で失業保険法が制定されて、その後1974年(昭和49年)に失業保険法を吸収した雇用保険法が制定されました。

私たちと密接な関係のある科目であり、試験における出題もオーソドックスなものが多いため、一旦マスターしてしまえば、得意科目にすることも可能です。

一方、試験範囲が膨大で制度体系が複雑であり、各種給付制度では類似した紛らわしい用語が多く使われているなど、決して楽な科目ではありません。特に学習開始当初は「勉強が進んでいる気がしない」と感じ、そのまま苦手意識を持ってしまう受験生も多くいます。

以上のように、雇用保険法は人によって得意・不得意の分かれる科目ですが、この記事では

「雇用保険法の出題傾向・効率的に攻略するための勉強法」

について詳しく説明していきましょう。

社会保険労務士(社労士)の試験科目!雇用保険法の内容は?

雇用保険法は雇用全般に関する支援を行う法律で、憲法第27条における「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ」との規定を受けて制度化されたものです。

まず雇用保険法の体系を見てみましょう。

  • 総則
  • 適用事業等
  • 失業等給付
  • 雇用安定事業等
  • 費用の負担
  • 不服申立て及び訴訟
  • 雑則
  • 罰則

上記のうち、実際の施策は「失業等給付」「雇用安定事業等」になり、それぞれの大まかな内容は以下のとおりです。

  • 「労働者が失業してその所得の源泉を喪失した」「労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた」「労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた」という際に、生活及び雇用の安定と就職の促進が目的で支給する失業等給付
  • 失業の予防や雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発や労働者の福祉の増進を図る目的で実施するニ事業(雇用安定事業と能力開発事業)

労働者が失業すると、収入が途絶えて満足のいく生活を送ることができません。

その労働者が困ることのないように、必要な給付を行うこと等を目的とした雇用保険法が制定されているわけですね。

雇用保険というと「失業時の保険」のイメージが強いかも知れません。しかし、それ以外にも就職の促進を図って労働者が安定した生活を送れるようにしたり、事業主に必要な助成をして労働者の失業を予防したりといった機能も持ち合わせています。

雇用保険法の規定の大半は「失業等給付」

ここでは、雇用保険法の規定の大半を占める「失業等給付」について、もう少し詳しく見ていきましょう。

失業等給付は、以下4つの給付から構成されています。

  • 求職者給付:失業者の生活保障を目的とする。一般被保険者向けの「基本手当」の他、高年齢被保険者向けの「高年齢求職者給付金」、短期雇用特例被保険者向けの「特例一時金」、日雇労働被保険者向けの「日雇労働求職者給付金」などがある
  • 就職促進給付:失業者の早期再就職を支援する給付であり、「再就職手当」や「就業促進定着手当」などがある
  • 雇用継続給付:高齢者や介護をする方の雇用の継続を支援するもので、「高年齢雇用継続給付(高年齢雇用継続基本給付金・高年齢再就職給付金)」と「介護休業給付」がある
  • 教育訓練給付:労働者が自ら職業能力を高めようとする取り組みを支援するものであり、「教育訓練給付金」と「教育訓練支援給付金」がある

以上のように大きく4つの制度に分かれますが、残念ながら「失業等給付」について上記記載ですべて網羅できているわけではありません。

たとえば、一般被保険者向けの求職者給付には、上記に記載の「基本手当」の他、「傷病手当」「技能習得手当(受講手当・通所手当)」「寄宿手当」などがあります。

このように、給付の種類が多く、それぞれの受給額の算定の仕組みが異なるなど、試験範囲が膨大で内容も複雑です。

また、類似した紛らわしい用語が多く使われているのも受験生泣かせですね。上記の中だけでも、「高年齢求職者給付金」「高年齢雇用継続基本給付金」「高年齢再就職給付金」など、それぞれの違いを適切に把握しなければなりません。給付以外にも、たとえば算定対象期間と算定基礎期間などの類似した用語が出てきます。

さらに覚えるべき数字も多数あるため、苦手に感じる方が出てきてしまうのも仕方がないのかも知れません。

詳しくは「勉強法」の項で説明しますが、まずは「全体像をざっくり押さえる」ことに集中したほうが、結果的に速くマスターできるでしょう。

社会保険労務士(社労士)の試験科目!雇用保険法の出題傾向は?

社会保険労務士(社労士)の試験対策を行うに当たり、科目ごとの出題傾向を把握するのは大切です。

出題傾向や重要項目がわかっていれば、効率良く勉強を進めて得点源にできますよ。

社会保険労務士(社労士)の雇用保険法の試験は、10問の択一式試験1問(空欄が5つ)の選択式試験です。

なお、選択式では5つの空欄すべて雇用保険法からの出題ですが、択一式は10問のうち3問は労働保険徴収法からの出題になります。つまり、択一式における雇用保険法の出題は、正確には7問ということになります。

合格基準点

科目ごとの原則的な基準点は、下記のとおりとなっています。

  • 選択式:5点満点中3点以上
  • 択一式:10点満点中4点以上

原則は上記のとおりですが、毎年、各試験科目の難易度を考慮して補正(救済・引き下げ)が実施されます。

雇用保険法においては、選択式において、過去に「5点中2点以上」と合格基準点が補正されたことが複数回あります。ただし、択一式においては補正が入ったことはありません。

参考までに頭に入れておくと良いでしょう。

頻出分野は「失業等給付」

雇用保険法の中でも失業等給付に関する内容は社会保険労務士(社労士)の試験で毎年出題されています。

条文のほぼ大半が各種給付に関する失業等給付で占めているため、択一式試験と選択式試験の両方で出題されやすいのは当然ですね。

さらに失業等給付の中でも、もっとも出題が多いのは求職者給付です。

「どの給付は、どの被保険者に適用されるのか? その目的は?」といったポイントを押さえて学習すると、比較的理解しやすくなります。

もちろん、雇用保険法ではその他の分野からも出題されますので、手を抜かないように学習して社会保険労務士(社労士)の合格を目指してみてください。

社会保険労務士(社労士)の試験科目!雇用保険法の勉強法はこれだ!

社会保険労務士(社労士)の試験科目の雇用保険法は、試験範囲が膨大な上に似たような用語が多く、混乱しやすいのが難しいところです。

しかし、用語を区別して理解できれば雇用保険法を得点源にできます。

ここでは社会保険労務士(社労士)の試験科目の雇用保険法の正しい勉強法を紹介していますので、これから資格取得を目指す方は参考にしてみましょう。

条文を理解することから始める

社会保険労務士(社労士)の試験科目の雇用保険法に限った話ではありませんが、まず最初に条文を理解することから始めるべきです。

中でも次の3つの条文は雇用保険法を勉強する上で必須ですので、理解を深めておかないといけません。

  • 国民に勤労権を保障して勤労の義務を課している雇用保険法
  • 雇用保険法を施行するために必要な細則を定めている雇用保険法施行令
  • 上記の2つを施行するために各府省の大臣が発する命令の雇用保険法施行規則

社会保険労務士(社労士)の初学者が条文を読んでも、「一体何を指しているの?」と疑問を抱えやすいため、参考書やテキストと合わせて順番に確認するのがポイントです。

使用する参考書は学習した内容を記憶にしっかりと定着させるために、大手の資格取得専門学校など信用できる1冊を選びましょう。

全体像を理解してから細かい数字を覚える

社会保険労務士(社労士)の試験科目の中でも、雇用保険法は細かい数字が出てきます。

そこで、雇用保険法は頻出項目の失業等給付を中心にアウトラインをインプットして全体像を理解し、その後に細かい数字を記憶するのが効率の良い勉強法です。

雇用保険法の核とも言える失業等給付を理解できているかどうかで、社会保険労務士(社労士)の試験で得点できるか決まりますよ。

極端なことを言えば、細かい数字に関しては社会保険労務士(社労士)の試験の直前期に覚えてもOKです。

過去問を繰り返し解く

社会保険労務士(社労士)の雇用保険法以外の試験科目にも該当しますが、参考書やテキストで知識をインプットした後に過去問を繰り返し解きましょう。

社会保険労務士(社労士)の試験では、過去問が少し形を変えて出題される傾向があります。

つまり、再出題される問題も似たような問題も、過去問でしっかりと対策できるわけです。

具体的に社会保険労務士(社労士)の雇用保険法で過去に出題された問題を見ていきましょう。

<次の記述で正しいものは?>

:適用事業の事業主は雇用保険の被保険者に関する届出を事業所ごとに行わなければならないが、複数の事業所をもつ本社において事業所ごとに書類を作成し、事業主自らの名をもって当該届出をすることができる。(正しい)
:事業主が適用事業に該当する部門と任意適用事業に該当する部門を兼営している場合、それぞれの部門が独立した事業と認められるときであっても、すべての部門が適用事業となる。(間違い)
:雇用保険法の適用を受けない労働者のみを雇用する事業主の事業(国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業及び法人である事業主の事業を除く。)は、その労働者の数が常時5人以下であれば、任意適用事業となる。(間違い)
:失業等給付に関する審査請求は、時効の中断に関しては裁判上の請求とみなされない。(間違い)
:雇用安定事業について不服がある事業主は、雇用保険審査官に対して審査請求をすることができる。(間違い)

過去問を解いて間違ったり理解できなかったりした部分は、参考書やテキストに戻って復習します。

何度も繰り返し復習していると少しずつ知識が頭の中に入っていきますので、社会保険労務士(社労士)の試験対策では忘れずに過去問を使いましょう。

まとめ

社会保険労務士(社労士)の試験科目の雇用保険法についておわかり頂けましたか?

雇用保険法は「誰がどんな種類の給付を受けるのか?」という骨組みを理解し、細かい数字を覚えていくのが効率の良い勉強法です。

重要項目や頻出項目を中心に勉強すれば得点源にすることができますので、これから社会保険労務士(社労士)の試験にチャレンジする方はしっかりと取り組んでみてください。