社会保険労務士(社労士)の合格率の推移をまとめてみた
資格試験を受験するに当たり、合格率がどのくらいなのか気になるところですよね。
合格率が高ければ高いほど、「初学者の自分でも勉強して取得できるのでは?」とポジティブに考えられます。
労働保険や社会保険の専門家の社会保険労務士(社労士)は、他の資格と比べて合格率が低いことで有名です。
以下では、過去15年間で社会保険労務士(社労士)の合格率がどう推移しているのかまとめてみました。
<実施年度 受験申込者数 受験者数 合格者数 合格率>
平成16年 65,215人 51,493人 4,850人 9.4%
平成17年 61,251人 48,120人 4,286人 8.9%
平成18年 59,839人 46,016人 3,925人 8.5%
平成19年 58,542人 45,221人 4,801人 10.6%
平成20年 61,910人 47,568人 3,574人 7.5%
平成21年 67,745人 52,983人 4,019人 7.6%
平成22年 70,648人 55,445人 4,790人 8.6%
平成23年 67,662人 53,392人 3,855人 7.2%
平成24年 66,782人 51,960人 3,650人 7.0%
平成25年 63,640人 49,292人 2,666人 5.4%
平成26年 57,199人 44,546人 4,156人 9.3%
平成27年 52,612人 40,712人 1,051人 2.6%
平成28年 51,953人 39,972人 1,770人 4.4%
平成29年 49,902人 38,685人 2,613人 6.8%
平成30年 49,582人 38,427人 2,413人 6.3%
令和元年 49,570人 38,428人 2,525人 6.6%
令和2年 49,250人 34,845人 2,237人 6.4%
令和3年 50,433人 37,306人 2,937人 7.9%
社会保険労務士(社労士)の合格率のデータを見てみると、かなりの難関資格だとわかります。
平均すると社会保険労務士(社労士)の合格率は6~7%前後で、誰でも受験して取得できる資格ではありません。
年度によって社会保険労務士(社労士)の合格率が変動するのは、下記のように法改正による影響が考えられます。
- 例えば平成25年度に労働基準法の改正が久しぶりに行われた
- 合格率が前年の7.0%から5.4%まで低下した
- 問題を難しくし過ぎた反省で翌年は9.3%まで上昇した
- 今度は合格率が高くなり過ぎたため、更に翌年の合格率は2.6%にまで落ち込んだ
平成29年度と平成30年度は法改正がなかったので、合格率は6%前後に安定していますね。
どちらにしても、社会保険労務士(社労士)の試験は合格率の低い難しい資格だと心得ておいた方が良いでしょう。
社会保険労務士(社労士)の合格者の年齢層
次に社会保険労務士(社労士)の合格率ではなく、合格者の年齢層の割合を年度別で見ていきます。
<実施年度 20代 30代 40代 50代 60代以上>
平成16年 28.2% 42.3% 17.2% 9.6% 2.7%
平成17年 24.7% 41.2% 19.9% 11.2% 3.0%
平成18年 23.8% 42.5% 18.7% 12.2% 2.8%
平成19年 17.8% 44.8% 20.9% 12.4% 4.1%
平成20年 17.3% 43.1% 22.3% 13.1% 4.2%
平成21年 18.7% 45.7% 19.8% 11.1% 4.7%
平成22年 15.6% 42.8% 23.0% 12.8% 5.8%
平成23年 13.2% 40.2% 24.1% 15.8% 6.8%
平成24年 12.2% 41.5% 26.8% 14.0% 5.6%
平成25年 11.8% 40.7% 28.5% 13.3% 5.7%
平成26年 11.1% 35.8% 28.5% 17.9% 6.7%
平成27年 9.6% 32.5% 30.9% 18.0% 9.0%
平成28年 9.1% 31.4% 32.3% 18.8% 8.4%
平成29年 10.0% 30.7% 31.2% 19.6% 8.5%
平成30年 9.2% 29.5% 32.8% 19.2% 9.3%
令和元年 8.2% 33.1% 31.5% 18.8% 8.4%
平成 2年 12.3% 30.1% 30.1% 18.7% 8.8%
社会保険労務士(社労士)の取得を目指す9割近くが社会人ですので、合格者も30代や40代が多いのが特徴です。
近年では60代以上の社会保険労務士(社労士)の合格者も、8%~9%とかなり増えています。
平成30年度における社会保険労務士(社労士)の試験の最高年齢合格者は、何と84歳でした。
難関資格ではあるものの、何歳になってもチャレンジできる資格ですので、就職や転職で役立てたい方は社会保険労務士(社労士)の取得を目指してみてはいかがでしょうか。
社会保険労務士(社労士)の試験の合格率はなぜ低いの?
社会保険労務士(社労士)の試験の合格率がなぜ低いのか、疑問を思っている方も多いでしょう。
上記の表を見てもらえばわかる通り、社会保険労務士(社労士)の合格率は相当低いです。
行政書士やFP(ファイナンシャルプランナー)など、関連する他の資格と比較してみてもかなり低い数値になっています。
そこで、このページでは社会保険労務士(社労士)の合格率が低い理由について詳しくまとめてみました。
試験科目数が多く、範囲が幅広い
社会保険労務士(社労士)の合格率が低くて試験が難しいのは、試験科目数が多く、範囲が幅広いのが理由です。
社会保険労務士(社労士)の試験は、次の10の科目で構成されています。
- 労働基準法:労働条件の最低基準を定めた法律で使用者に一定の制限を設けている法律
- 労働安全衛生法:安全衛生管理体制や健康管理等を規定して労働者を守っている法律
- 労働者災害補償保険法:業務上災害や通勤災害など医療サービスや現金支給による補償を規定した法律
- 雇用保険法:必要な給付を行って雇用の安定と就職の促進を図ることを目的にした法律
- 労働保健の保険料の徴収等に関する法律:労災保険と雇用保険の保険料の徴収や事務手続きについて定められた法律
- 労務管理その他の労働に関する一般常識:介護休業法や男女雇用均等法など労働に関連する法律や、労務管理や労働経済など広く出題される
- 社会保険に関する一般常識:会保険の歴史的沿革や国民健康保険法、介護保険法から広く出題される
- 健康保険法:仕事以外の理由で病気や怪我になった際に医療費を援助されることが定められた法律
- 国民年金法:日本の年金制度の基礎になる国民年金に関する問題が出題される
- 厚生年金保険法:国民年金に上乗せされる年金制度(2階建ての2階部分)で、会社員や公務員が加入するもの
法令や一般常識の知識を中心に、社会保険労務士(社労士)に合格するには膨大な暗記をしないといけません。
中でも労務管理その他の労働に関する一般常識と社会保険に関する一般常識は出題範囲が広く、対策が取りづらい科目です。
※労務管理その他の労働に関する一般常識と社会保険に関する一般常識の出題傾向や勉強法は、こちらのページで解説しています。
社会保険労務士(社労士)の試験合格を目指すには、かなりの勉強時間が必要だと心得ておかないといけません。
全ての科目に基準点(足切り)が設けられている
社会保険労務士(社労士)の試験は、下記のように基準点(足切り)が設けられています。
- 選択式試験は総得点23点以上(各科目3点以上)
- 択一式試験は総得点45点以上(各科目4点以上)
つまり、9個の科目が満点でも、残りの1科目が0点だと社会保険労務士(社労士)の試験には合格できません。
「○○点を取れば必ず合格できる」というわけではなく、1つでも合格基準点に満たない科目があれば足切りにあうのは、社会保険労務士(社労士)の合格率が低い理由の一つです。
この基準点(足切り)はとても厄介ですので、苦手分野を克服して不得意な科目を作らないような対策をしてください。
過去に合格した科目の受験が免除されない
専門的な知識が必要な国家資格の中には、科目合格制度を設けているケースが多々あります。
科目合格制度とは、受験した科目で一定基準の得点を取ると、翌年や翌々年の受験が免除される仕組みですね。
翌年は試験に落ちた科目だけを中心に勉強すれば良いので受験生にとってはありがたいのですが、社会保険労務士(社労士)には科目合格制度がありません。
どの年度に受験しても1年に1回の一発勝負になりますので、「社会保険労務士(社労士)の試験は難しい」「社会保険労務士(社労士)の合格率は低い」という理由になります。
社会保険労務士(社労士)の試験に合格するには苦手科目をなくすのはもちろんのこと、得意科目の取り漏れのないように学力をキープする対策が必須です。
条件を満たす方には、免除制度がある
ただし、「試験免除制度が全くない」という訳ではありません。
公務員や日本年金機構の役員・従業員として従事していた方のうち一定の条件を満たす方には科目免除制度が受けられます。
また、民間の方でも、「社労士事務所の補助者として15年以上従事した者(一般企業は不可)」など向けに、免除指定講習が用意されています。
免除指定講習は1科目あたり45,000円(高い!)と高額ですが、免除指定講習を受講することで、最大4科目まで科目免除されます。
※免除制度や免除指定講習について詳しくは、下記の記事を参考にしてください。
救済という名の得点調整が行われている
※「救済」に関しては、どちらかと言えば「合格率を高める施策」なのですが、社労士の合格率を語るうえで「救済」は外すことはできませんので、ここで説明します。
社会保険労務士(社労士)の試験は公表されていないものの、相対試験だと考えられます。
絶対基準の試験は「○○点以上で必ず合格する」のに対して、相対試験は「上位○%以上にランクインする」という競争に打ち勝たないといけません。
そこで、社会保険労務士(社労士)の試験は合格率を操作するために、救済という名の得点調整が行われています。
平成29年度の試験は「雇用保険法と健康保険法は2点以上」、平成30年度の試験は「社会保険に関する一般常識と国民年金法は2点以上」と救済が設定されました。
救済がどの科目に適用されるのかで合否が決まりますので、社会保険労務士(社労士)の試験は運の要素も少なからずありますよ。
合格ラインギリギリの人の合否は運で決まる要素があるのは、受験生からすると釈然としない部分もあります。
しかし、救済がなければ、さらに社会保険労務士(社労士)の合格率は低くなるでしょうから、やむを得ない対応とも考えられます。
もちろん、しっかりと勉強時間を確保して合格ラインを確実に突破できるように努力していれば何も問題はありません。
※社労士試験の救済制度については、下記の記事も参考にしてください。
まとめ
過去の社会保険労務士(社労士)の合格率を見てみると、かなり低いことがおわかり頂けましたか?
平均すると6%前後ですが、合格率が2.6%の年度もありました。
社会保険労務士(社労士)の合格率が低いのは、「試験科目が幅広い」「基準点がある」「科目合格制度がない」といった理由が考えられます。
難しい試験だからこそ資格を取得した後に普段の仕事や転職に活かすことができますので、「自分には無理でしょ…」と諦めずに社会保険労務士(社労士)にチャレンジしてみてください。
以下の記事では、合格率が低い社労士試験に短期合格するポイントをまとめています。気になる方は合わせてチェックしてみてください。