マイナンバー制度とは?
マイナンバーとは、住民票を持つ全ての人に与えられる12桁の番号を指しています。
「行政の効率化」「国民の利便性の向上」「公平・公正な社会の実現」といった目的で、マイナンバー制度の運用が開始されました。
マイナンバーが漏えいして不正に用いられる恐れがある場合を除き、この12桁の番号は自由に変更することができません。
原則として生涯同じマイナンバーを各種行政手続きの申請時に提出すれば、今までは必要だった証明書類の一部を用意せずに済みます。
マイナンバーの基本
以下では、マイナンバーに関する基本情報をまとめてみました。
- マイナンバーと法人番号の違い:マイナンバーは12桁の番号なのに対して、法人番号は13桁の番号が割り当てられる
- 通知カードと個人番号カードの違い:登録を進めて届くマイナンバーの通知カードは紙製のカードで、個人番号カードは裏面にマイナンバーが記載されたプラスチック製のカード
- マイナンバーの安全性:行政機関が使うマイナンバー情報は、分散管理方式で高い安全性が確保されている
- マイナンバーへの対応:マイナンバー制度開始に向けて、企業は担当者を決めたり取扱規程を作成して従業員に知らせたりと実務をやるべき必要がある
マイナンバーは、個人事業主やサラリーマンの確定申告の時に欠かせません。
事業者は従業員の税金や保険の手続きでもマイナンバーの番号が必要です。
マイナンバーの利用目的
マイナンバーには利用の制限があります。
事業者用の特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドラインでは、次の利用目的の具体例が示されていました。
事業者用の特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン | |
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事業者全般の具体例 | 「源泉徴収票作成事務」「健康保険」「厚生年金保険加入等事務」 |
金融分野の具体例 | 「金融商品取引に関する支払調書作成事務」「保険取引に関する支払調書作成事務」 |
参考:マイナンバーの利用目的はどのように通知・公表するべきか
利用目的の通知方法は、「就業規則に記載する」「書類を配布する」といった方法が挙げられます。
利用目的を後から追加することはできないため、漏れをなくすにはある程度抽象的に記載するのがベストですね。
社労士業務におけるマイナンバーの影響
「マイナンバー制度は社労士業務にどのような影響を与えるの?」と疑問を抱えている方はいませんか?
2016年の1月からマイナンバー制度の運用が開始されて、社会保障や税金の申請や手続きに用いられています。
私たちの生活から切り離せない存在ですが、労働保険や社会保険の法令に精通する社労士にもマイナンバーが少なからず影響をもたらすのは事実です。
このページでは、今後益々活用頻度が高まるマイナンバーが社労士業務に与える影響を詳しくまとめました。
マイナンバーで社労士の仕事は減らない
AIの導入により、社労士の仕事は今後減っていくと予想されています。
※AI時代の社労士に将来性があるのかどうかはこちら!
しかし、マイナンバー制度が導入されたからといって、社労士の仕事が減ることはありません。
内閣府ホームページでは、マイナンバーの創設目的は「公平・公正な社会の実現」「国民の利便性の向上」「行政の効率化」の3つだと記載されています。
当初は行政手続き業務の効率化で社労士の独占業務の「労働・社会保険関連手続き代行」が減るのではないかと懸念があったものの、既存の業務にマイナンバー管理の必要性が加わるのは社労士にとって追い風ですよ。
「手続き業務」への影響
社労士の代表的な業務は、労働保険・社会保険関連の手続きです。
マイナンバーの導入を受けて書類の様式が変更され、番号を記入する欄が設けられました。
この変更を受けて、事業主は従業員からマイナンバーを収集したり適正に管理したりといった義務が課せられています。
つまり、「事業主の負担が増える」⇒「社労士の仕事が増える」⇒「ビジネスチャンスに恵まれる」と、社労士にとって良い影響なのは間違いありません。
マイナンバーによって住所変更届等の一部の手続きが不要になりましたが、逆に個人情報管理における社労士の需要は高まりを見せています。
「給与計算」への影響
マイナンバー制度が始まった2016年からは、給与計算・社会保険業務はマイナンバー無しでは対応できない状況です。
従業員の納税など通常の給与計算事務に加えてマイナンバー管理が必須になりましたので、社労士に委託する企業や会社が増えています。
どの会社でも給与計算事務は発生するため、マイナンバー制度の導入で社労士は月次顧問契約を締結できる可能性が高まったのです。
※社労士に給与計算を任せるメリットはこちら!
「就業規則作成」への影響
就業規則の作成や改定といった業務は、社労士の専門分野の一つです。
依頼主の立場に立ってみると、就業規則作成を社労士に依頼するに当たって次の3つのメリットがあります。
- 本業に専念できる(面倒な事務手続きが不要)
- 助成金を活用した企業経営ができる
- 人事や労務のトラブルを未然に防げる
マイナンバー制度が導入されてからは、就業規則を新たに作成したり規程を改定したりする会社が増えました。
社内でのマイナンバー対応を円滑に進めるためにも、社労士への需要が高まっていますね。
マイナンバーを適切に管理できない社労士は淘汰される
社労士の専門分野として、新たにマイナンバー管理が追加されました。
<労働・社会保険関連>
- 従業員からマイナンバーを収集する
- 収集したマイナンバーを管理する
- 雇用保険、健康保険、厚生年金の資格取得
- 給付を受ける手続き
- 福祉分野の各種給付や生活保護
<税務関連>
- 確定申告や年末調整
- 扶養控除等申告書に7年間の保管義務
<災害対策>
- 被災者への迅速・的確・効率的な支援
マイナンバー制度の導入は、社労士にとって結果的に業務拡大のチャンスとも捉えられます。
むしろマイナンバーを適切に管理できない社労士は淘汰されますので注意しましょう。
マイナンバーの保管についての規程
マイナンバー制度では、特定個人情報は法律で限定的に明記された場合を除き、保管をしてはならないと規定されています。
所管法令で定められた保管期間を過ぎた場合は、できる限り速やかに廃棄または削除しないといけません。
原則的にマイナンバーは利用するごとに取得が必要だと心得ておきましょう。
安全管理措置
マイナンバー管理について精通していれば、マイナンバーに強い社労士として競争力を持てます。
マイナンバーを取り扱う際に実施が義務付けられている安全管理措置は次の4つです。
マイナンバーの安全管理措置 | |
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組織的安全措置 | 取り扱い担当者を明確に定めて組織全体として取り組むべき安全措置 |
人的安全措置 | マイナンバーの取り扱い方やルールを教育して人的ミスを未然に防ぐ |
物理的安全措置 | 関連書類の保管場所を鍵付きにするなど物理的に情報が奪われるのを防ぐ |
技術的安全措置 | アクセス権限を限定化してセキュリティの強化や不正アクセスを徹底する |
特定個人情報を適切に管理・運用するには、各種の安全管理措置を取らないといけません。
保管期限
特定個人情報はマイナンバー法で利用目的を明示して収集し、必要がある限りは保管し続けることができます。
個人番号カードの有効期限は10年ですが、番号そのものの保管期限は生涯です。
事務手続きで必要な限り保管し続けることができるため、何度も収集する必要はありません。
廃棄システム
機密書類の管理業務は、保管するよりも廃棄の方に手間やコストがかかります。
例えば、マイナンバーが記載された書類やデータは、二度と復元できないように処理する必要あり!
つまり、あらかじめスムーズに破棄できるシステムを用意するのが賢明です。
マイナンバー対応に強みを持つ社労士になるために
マイナンバーの取り扱いや管理が必要になったことを受けて、負担が大きくなった企業から社労士への依頼が増えると予想されます。
そこで、マイナンバー対応に強みを持つ社労士になるにはどうすれば良いのか見ていきましょう。
- 保管方法や管理ツール研究、セキュリティ対策についてマスターする
- 個人情報保護や新しい働き方の創造に関するコンサルティング業務を行う
- 社労士自身がスキルアップして労務コンサルタントとして経営者を支える
- マイナンバー制度について知りたい会社員や事業者向けのセミナーを開催する
新たな業務にいち早く取り組むのは、他の社労士と差別化を図る秘訣です。
「社労士のためのマイナンバー対応ハンドブック」とは?
マイナンバーの実務には、次の内容について記載されている「社労士のためのマイナンバー対応ハンドブック」が役立ちます。
- マイナンバー制度の概要
- 管理体制の構築方法
- マイナンバー制度の開始で必要な各種契約書の見直し
「社労士のためのマイナンバー対応ハンドブック」は、全国社会保険労務士会連合会が作成している資料です。
顧問先企業と社労士事務所の双方がマイナンバーに関する理解を深めるために欠かせませんので、社労士の会員専用サイトからダウンロードしましょう。
まとめ
マイナンバー制度の概要、社労士業務におけるマイナンバーの影響についておわかり頂けましたか?
マイナンバー制度の導入で社労士の仕事が減ることはなく、逆に業務拡大のチャンスとも捉えられます。
これから資格を取得して活躍したいのであれば、マイナンバー対応に強みを持つ社労士を目指しましょう。
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社労士コラムについては、下記の記事も参考にしてください。
<対象別コラム>
<ダブルライセンスのコラム>
<社労士実務に関するコラム>