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打切補償とは?療養補償や傷病補償年金との関係を徹底解説!

打切補償

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労働基準法上の打切補償とは?

労働基準法第81条では、打切補償について次のように記載されています。

第七十五条の規定によつて補償を受ける労働者が、療養開始後三年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合においては、使用者は、平均賃金の千二百日分の打切補償を行い、その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい。

参考:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049

労働基準法第75条の規定では、従業員が業務中にケガをしたり病気を患ったりした場合、企業には補償責任が有されています。

打切補償について

打切補償とは、療養補償の支払いを打ち切ることができる制度です。

第75条の規定で補償を受ける労働者が療養を始めて3年が経過しても負傷や疫病(=怪我・けがや病気)が治らない場合は、平均賃金の1,200日分の打切補償を支払うことで解雇できます。

特別な理由がない限り、打切補償による解雇は不当解雇に当てはまりません。

労働基準法第19条1項において、業務上の病気やケガで治療のための休業期間とその後30日間は解雇は禁止と決められていますが、打切補償を行った場合、適用除外になる仕組みですね。

企業の負担を軽減する制度として打切補償は設けられました。

療養補償とは?

療養補償は、業務上または通勤中の傷病によって療養が必要な場合に受けられる給付のことです。

療養補償の給付の種類は次の2つにわけられます。

 

療養補償の給付の種類
療養の給付 労災病院や労災指定病院にかかった時に、原則的に治癒するまで無料で療養を受けられる。
療養の費用の給付 労災病院や労災指定病院以外で治療する際に、その費用を現金で支給する制度。治療費(療養費)をいったん病院の窓口で支払い、後ほど費用を請求する。

 

補償される費用は、「診察」「薬/治療材料」「手術/処置」「介護」「移送」が代表的です。

打切補償の支払いにより解雇が可能になるケース

打切補償の支払いで従業員の解雇が可能になるケースは次の4つを全て満たしている場合です。

  • 業務に起因する病気やケガで何かしらの治療を受けている従業員であること
  • 使用者の費用負担で治療中の従業員であること(労災で治療費を出している場合も含まれる)
  • 治療を始めてから3年が経過したのに治療が完了しない場合
  • 平均賃金の1,200日分を支払った、または傷病補償年金が支給されている

使用者が打切補償を支払うと、補償責任から免れて従業員を解雇できます。

ただし、打切補償を支払っていても、解雇予告手当の支払いや30日前の解雇予告が必要な点には注意しましょう。

平均賃金の1,200日分の計算方法

打切補償の条件として、平均賃金の1,200日分の支払いが必要です。

平均賃金の1,200日分は、従業員の休業前の賃金締め日から3ヵ月間に渡って遡った給与の総額を、3ヵ月間の総日数で割って1200をかけた金額になります。

例えば、月給が40万円の従業員の計算方法は、「40万円×3÷90×1200」で1,600万円です。

労働基準法に基づく打切補償の支払いは、企業にとってかなりの高額になります。

打切補償と傷病補償年金との関係

打切補償の条件である平均賃金の1,200日分の支払いは、企業にとって高額ですよね。

月給が30万円の従業員では1,200万円、月給が40万円の従業員では1,600万円を支払わないといけません。

そこで、企業の負担を軽くするために、

治療を始めてから3年が経過して傷病補償年金が支払われている場合(3年経過以降に支払いが開始された場合も含む)打切補償がされたこととする

という救済措置が設けられています。

従業員が病気やケガの治療を始めてから3年以上が経過した時点で、傷病補償年金の支払いを受けていると打切補償を支払ったと見なされますので、平均賃金の1,200日分を負担しなくても従業員を解雇できるわけです。

傷病補償年金は、労働者の傷病が療養開始後1年6ヵ月が経過しても治らなかった時に支給されます。

しかし、傷病補償年金が支給されるのはかなり重い障害のみという点には注意が必要…。

「両手の手指を全部失った」「言葉を話せなくなった」など、3級以上の障害に当てはまる際に傷病補償年金が支給されます。

打切補償と退職金の関係

退職金は、在職中の功績に対する労いや賃金の後払いのために作られた制度です。

つまり、打切補償とは別個の制度ですので、打切補償を支払って従業員を解雇する場合でも、退職金は別途で支払わないといけません。

退職金制度を設けている会社は、打切補償の支払いが加わって負担が大きくなると心得ておきましょう。

打切補償と解雇予告手当の関係

打切補償で従業員を解雇する場合、30日前に予告しないといけません。

打切補償に限らず、労基法第20条では労基法第20条ではするに当たって正当な理由でも30日以上前から解雇予告が必要だと定められています。

もし30日前に予告をしていなければ、別途で解雇予告手当を支払う必要あり!

つまり、打切補償を支払って従業員を解雇するには、解雇の30日前に予告するのが合理的です。

通勤災害と打切補償の関係

次の2つに当てはまる場合では、打切補償を支払わなくても従業員を解雇できます。

  • 通勤災害によるケガが原因で欠勤が続いている
  • 私的な病気やケガが原因で欠勤が続いている

従業員が通勤災害でケガをしても、労働基準法の第19条1項の解雇禁止には当たりません。

一定期間休職し、復職できない状況の場合、使用者は打切補償を支払わなくても良いわけです。

※【補足】完全に自由に解雇が出来るという訳ではありません。解雇には相当の合理的な理由が必要ですので、その点はご注意ください。

労災補償の種類の一覧

労災補償とは、労働者の業務災害や通勤災害で必要な保険給付を行う制度です。

一口に労災補償と言ってもいくつかの種類がありますのでそれぞれ見ていきましょう。

 

労災補償の種類
療養補償給付(療養給付) 業務上の負傷や疫病で療養を必要とする場合に給付される
休業補償給付(休業給付) 業務上の負傷や疫病で働くことができない時に4日目から支給される
傷病補償年金(傷病年金) 労働者の傷病が療養開始後1年6ヵ月が経過しても治らない時に支給される
障害補償給付(障害給付) 傷病が治った後に身体に一定の障害が残った場合に支給される
遺族補償給付(遺族給付) 業務上や通勤で死亡した労働者の遺族に支給される
介護補償給付(介護給付) 傷病補償年金や障害補償年金を受給している者で、介護を受けている場合に支給される
二次健康診断等給付 健康診断の検査で異常が見られた時に、精度の高い二次健康診断と保健指導を給付する

 

労災補償の種類別の給付金額については、こちらのページをご覧になってください。

参考:労災保険給付の種類について https://jsite.mhlw.go.jp/fukuoka-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/rousai_hoken/hourei_seido/hosyo03.html

社労士試験での「打切補償」への対策は?

社労士試験において、打切補償に関する内容も出題されます。

平成19年度の社労士試験の過去問では、労働基準法に定める解雇に関する問題が出題されました。

参考:社労士過去問ランド https://sharousi-kakomon.com/q/2007/0/4/

社労士試験での打切補償への対策は、解雇制限と打切補償の関係性を捉えておくのが重要です。

更に「業務上の負傷又は疾病」「傷病補償年金」「平均賃金の1,200日分」といった理解も問われます。

社労士試験で問われる打切補償の概要をテキストで正しく理解し、試験対策を徹底しないといけません。

しかし、社労士試験の打切補償関連の出題では基本的な事項を問う問題がほとんどですので、テキストや過去問以外の対策は行わなくても大丈夫です。

社労士のテキストについて詳しくは、下記の記事も参考にしてみてください。

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まとめ

打切補償とは何なのか、傷病補償年金や退職金との関係性についておわかり頂けましたか?

業務上のケガや病気で休業を余儀なくされ、治療を始めてから3年間が経過しても完治しない時は、平均賃金の1,200日分を支払って療養補償の支払いを打ち切ることができます。

社労士試験では基本的な事項を問う問題がほとんどですので、確実に得点できるように準備しておきましょう。