社会保険労務士(社労士)の試験科目の国民年金法について
社会保険労務士(社労士)の試験科目の中でも、国民年金法について苦手意識を持つ受験生は少なくありません。
「今働いているから労働関係の分野は理解できるけど、年金の知識はサッパリ・・・」という方は多いですね。
しかし、年金科目には国民年金と厚生年金保険の2種類があり、一般常識も加えますと、年金関連の問題だけで択一式70問中の30%以上(20問+α)を占めるので、年金の科目を避けて通ることはできません。
また、「年金科目は難しい」と一概に考えるのは間違いです。というのも、確かに厚生年金保険は制度が複雑化し過ぎて難易度が高いものの、国民年金は厚生年金ほどの複雑さではない上、本試験においても基本的な内容が多く出題されています。
つまり、必要以上に国民年金を恐れる必要はありませんし、国民年金は厚生年金保険の基礎となっていますから、国民年金法についてきちんと理解を深めれば、厚生年金法の勉強も遥かに楽になるのです。
もちろん、社会保険労務士(社労士)の試験は科目ごとに足切りラインが用意されていますので、全てを満遍なく学習して得点できる状態にしないといけません。
この記事では、社会保険労務士(社労士)試験科目の国民年金法について詳しく解説していきます。
「どのような問題が出題されるの?」「どのように勉強を進めれば良いの?」と悩んでいる方は要チェックです。
社会保険労務士(社労士)の試験科目!国民年金法の内容とは?
社会保険労務士(社労士)の試験科目は、全部で10科目あります。
中でも国民年金法は複雑というイメージが大きいのですが、苦手意識を持つのは良くありません。前述のとおり、厚生年金保険に比べれば、はるかに取り組みやすい科目です。
ここでは、社会保険労務士(社労士)の試験の国民年金法に関する大まかな内容から見ていきましょう。
前述のとおり、年金の種類は国民年金と厚生年金保険の2種類に大別されますが、両方の特徴を簡単にまとめてみました。
- 国民年金は基礎年金と呼ばれるもので、日本に住む20歳以上60歳未満の国民全員が必ず加入する年金
- 厚生年金保険は国民年金に上乗せされて給付される形で、会社員やサラリーマンが対象になる
元々2つの年金にわかれていたわけではなく、制度が円熟する経緯で「国民年金」「厚生年金保険」になりました。
社会保険労務士(社労士)の試験対策で最初に国民年金法を勉強すべきなのは、厚生年金保険が国民年金の上乗せ部分に位置しているのが理由ですよ。
一階建ての国民年金、二階建ての厚生年金保険や国民年金基金に加えて、三階建ての退職年金を合わせて年金制度は区分されています。
年金によって加入する対象者が変わりますので、今度は被保険者の種類を見ていきましょう。
- 第1号被保険者:自営業者や学生が対象で、「日本国内に住所を有する」「20歳以上60歳未満である」「第2号被保険者や第3号被保険者ではない」と定義されている
- 第2号被保険者:会社員やサラリーマンが対象で、「厚生年金保険の被保険者である」「老齢年金の受給権を有する65歳以上の者ではない」と規定されている
- 第3号被保険者:専業主婦が対象で、「20歳以上60歳未満である」「第2号被保険者の配偶者でその収入で生計を維持する者」「原則として年収が130万円未満」と規定されている
第1号被保険者が加入する年金は国民年金、第2号被保険者は国民年金と厚生年金保険、第3号被保険者は国民年金です。
厚生年金保険は職場に勤めている会社員やサラリーマンが対象ですので、学生の第1号被保険者や専業主婦の第3号被保険者が該当しないのは何となくおわかり頂けるのではないでしょうか。
昭和61年の4月に、公的年金制度の大改正が実施されました。
社会保険労務士(社労士)の国民年金法の試験ではあまり出題されないため、それ以降の新法と呼ばれる年金保険制度について勉強しておけばOKです。
社会保険労務士(社労士)の試験科目!国民年金法の出題傾向とは?
前述しましたが、社会保険労務士(社労士)の年金に関する試験問題は、択一式だけでも全部で20問もあります。
国民年金法と厚生年金保険法がそれぞれ10問ずつ出題される形になりますので、社会保険労務士(社労士)の試験科目の中でも年金が占める割合は大きいわけです。
逆に言えば、国民年金法と厚生年金保険法が得意分野になれば、社会保険労務士(社労士)の試験に合格できる確率はアップします。
以下では、社会保険労務士(社労士)の試験の国民年金法の出題傾向についていくつか挙げてみました。
- 比較的内容の理解が簡単で素直な問題が多く、合格を目指すには10点中8点以上が目標
- 基礎的な知識でも十分に対応できるレベルの問題も出題される
- 年金財政や制度の歴史に関する問題も出題される
一方で、社会保険労務士(社労士)の国民年金法は度重なる改正で制度自体が複雑化されている部分もあり、以前に比べると近年では難易度が上がってきています。
それでも、内容理解の簡単な問題が多く出題されますので、国民年金法を得点源にするのは不可能ではありません。
一方で厚生年金保険法は複雑な制度理解がネックになり、十分な対策ができない受験生がたくさんいます。
もちろん、捨て科目にすることはできませんので、国民年金法の学習をして理解度を深めてから厚生年金法の分野に移行する流れがおすすめです。
社会保険労務士(社労士)の試験科目!国民年金法の正しい勉強法はこれだ!
社会保険労務士(社労士)の試験科目の国民年金法は、対策が極端に大変というわけではありません。
覚える内容が多岐に渡りますが、正しい方法で勉強に取り組んでいれば得点源にできます。
このページでは社会保険労務士(社労士)の国民年金法の正しい勉強法について解説していますので、「年金に関する問題は大丈夫なの?」と苦手意識を持っている方は参考にしてみてください。
基本的な給付と要件を整理して理解する
社会保険労務士(社労士)の国民年金法は、学習時間に比例して得点が上がる科目です。
しかし、国民年金の給付に関する知識がないと法改正絡みの問題もあやふやな状態になりやすいため、まずは基本的な給付と要件を整理して理解するのが正しい勉強法になります。
国民年金法を理解する上で、第1章に該当する総則(基本の決まり)は欠かせません。
国民年金法の総則では、下記の事柄への規定がまとめられています。
- 国民年金制度の目的
- 国民年金の給付
- 管掌
- 年金額の改定
- 財政の均衡
- 財政の現況及び見通しの作成
- 用語の定義
- 権限の委任
- 事務の区分
年金制度の細部まで完璧に理解するのは大変でも、社会保険労務士(社労士)試験でそこまで細かい部分まで問われることはありません。
社会保険労務士(社労士)のテキストや参考書に記載された基本事項を一つひとつ頭に入れて、出題傾向に合わせて問題演習に取り組んでいれば勉強の方向性を見失わずに済みますね。
細かい年金の給付について頭に入れる
社会保険労務士(社労士)の試験科目の国民年金法では、細かい年金の給付についても出題されます。
一口に年金と言っても、その種類は以下のように様々です。
- 老齢基礎年金:65歳から支給される国民共通の老齢年金で、納付している期間が10年間以上の被保険者が受給できる
- 障害基礎年金:病気やケガが原因で重い障害を負った際に、障害等級に合わせて受け取ることができる公的年金
- 遺族基礎年金:一家の大黒柱が亡くなった際に、配偶者や子供などの遺族が受け取ることができる公的年金
- 寡婦年金:夫に先立たれた未亡人に支給される年金で、婚姻期間が10年以上の妻が対象になる
- 脱退一時金:被保険者の期間が6ヵ月以上の外国人が対象で、短期在留外国人の返還金制度のこと
- 死亡一時金:第1号被保険者の期間が3年以上の被保険者が死亡し、遺族基礎年金が支給されない時に受給できる
- 付加年金:第1号被保険者が該当する独自給付で、老齢基礎年金に上乗せされる形で支給される
基本となる「老齢基礎年金」「障害基礎年金」「遺族基礎年金」以外の給付についても、社会保険労務士(社労士)の国民年金法の試験では出題されます。
それぞれの給付の支給要件や対象者を把握するのが社会保険労務士(社労士)の試験対策では欠かせません。
他の科目にも該当しますが、社会保険労務士(社労士)の国民年金法は出題されやすいキーワードを中心に知識を深めていくのが効率的な勉強法です。
基本給付の「老齢基礎年金」「障害基礎年金」「遺族基礎年金」、それぞれの給付に関わる「被保険者」「届出等」、国民年金の「保険料」「保険料免除」を中心に的確に押さえてください。
過去問をベースに傾向対策をする
社会保険労務士(社労士)の国民年金法の試験は、過去問をベースに傾向対策をすべきです。
労働基準法や厚生年金保険法など他の科目も一緒ですが、過去問をひたすら解いているとどの部分が出題されやすいのか見えてきますよ。
社会保険労務士(社労士)の過去問は腕試しの教材ではなく、最高の教科書として利用すべき存在です。
国民年金法や厚生年金保険法など論点別に収録されている過去問を選んでいれば、分野ごとに集中して勉強して出題傾向を把握できます。
※社会保険労務士(社労士)の試験対策で過去問を使うべき理由はこちら!
具体的に社会保険労務士(社労士)の国民年金法の過去問で、どのような選択肢が出題されているのか見ていきましょう。
問題:65歳以上の者は、老齢基礎年金と老齢厚生年金を併給して受給することができる。
解答:○問題:63歳のときに障害状態が厚生年金保険法に規定する障害等級3級に該当する程度に軽減し、障害基礎年金の支給が停止された者が、3級に該当する程度の状態のまま5年経過後に、再び障害状態が悪化し、障害の程度が障害等級2級に該当したとしても、支給停止が解除されることはない。
解答:×問題:平成30年度の障害等級1級の障害基礎年金の額は、780,900円に改定率を乗じて得た額を100円未満で端数処理した779,300円の100分の150に相当する額である。なお、子の加算額はないものとする。
解答:×
実際の試験で出題された問題を把握できる過去問は効果的ですが、使い方が間違っていては意味がありません。
社会保険労務士(社労士)の国民年金法以外の科目にも該当するものの、次の点を意識して勉強すべきです。
- 毎年や2年間に1回など、頻出する論点に重きを置いて反復学習をする
- ほとんど試験に出ていないような分野や論点はサラっと学習する
- 間違えてしまった問題はテキストや参考書に戻って復習する
- 1回だけではなく、2回3回と解き直して知識の定着を図る
常に全体像を意識しながら必要な知識をインプットし、過去問を解いて間違えた部分を復習すればスっと頭の中に入ってきます。
合わせて厚生年金保険法の勉強もする
年金の理解には時間がかかりますが、この点は国民年金法だけではなく厚生年金保険法も一緒です。
この2つの科目には関連性がありますので、「国民年金法の学習」⇒「厚生年金保険法の学習」という順番で社会保険労務士(社労士)の試験対策をしましょう。
国民年金法の理解が十分な状態で厚生年金保険法の勉強に取り組むと、理解度が格段にアップします。
以下では、社会保険労務士(社労士)の試験科目の厚生年金保険法を勉強するコツをまとめてみました。
- 国民年金法の知識をベースにして、「似ている点」「異なっている点」を意識して頭の中を整理する
- 国民年金法と同じで、基本給付の「老齢厚生年金」「障害厚生年金」「遺族厚生年金」はしっかりと押さえる
- 過去問を解いて社労士試験で狙われるポイントや出題傾向に沿った対策で効率良く勉強する
- 国民年金法と厚生年金保険法の横断学習が活きてくる過去問を中心に解いてみる
国民年金法も厚生年金保険法も、知識のインプットと過去問による反復学習が大事な点では一緒です。
社会保険労務士(社労士)の国民年金法が得意なら複雑な厚生年金保険法の制度理解にも役立てられますので、2つの試験科目を紐づけて勉強してみてください。
まとめ
社会保険労務士(社労士)の試験科目の国民年金法についておわかり頂けましたか?
日本の年金制度は非常にややこしいのですが、出題傾向を押さえた勉強法に取り組んでいれば社会保険労務士(社労士)の試験で得点アップを図れます。
独学でも通信講座の利用でも、社会保険労務士(社労士)のテキストと過去問が欠かせません。
正しいやり方で国民年金法の勉強に取り組み、社会保険労務士(社労士)の資格取得を目指してみてください。