病気や怪我で障害が残ってしまった時に、セーフティネットとして機能する障害年金の仕組みは非常に重要なものです。
ただし、障害年金の申請は、以下のような理由で一般の方には難しい点があるのも事実です。
- 初診日の確定が難しい
- 精神障害は数値で明確に判断できない
- 社会保障費の削減で審査が厳しい
そのような中で、適切に申請代行できる社労士の存在は、非常に意義があるといえるでしょう。
今回の記事では、障害年金の請求手続きについて、分かりやすく説明していきます。
障害年金とは?対象者は?
障害年金とは、障害や病気によって日々の生活や仕事に支障が出た際に支給される年金のことを指します。
交通事故で障害者になった人や生まれつき知的障害を持つ方だけではなく、あらゆる病気や怪我が対象ですね。
年金と聞いて、「高齢者になった時に受け取れるものでは?」とイメージしている方はいませんか?
しかし、障害年金は若い年齢の人でも受け取ることができます。
障害年金は障害基礎年金と障害厚生年金の2種類で、それぞれの特徴を大まかに見ていきましょう。
- 障害基礎年金は初めて医師や歯科医師の診療を受けた日に、国民年金に加入している20歳未満または60歳以上65歳未満の人が受給できる
- 障害厚生年金は初めて医師や歯科医師の診療を受けた日に、厚生年金に加入している人が受給できる(障害基礎年金に上乗せされる形)
障害基礎年金の金額は障害基礎年金1級で月額約81,000円、障害基礎年金2級で月額約65,000円です。
一方で障害厚生年金の金額は、障害厚生年金1級の場合だと
「平均標準報酬額×(5.481÷1000)×被保険者期間の月数×(125÷100)+配偶者加給年金額」
という計算式に当てはめて算出されます。
これは一例ですが、障害年金の対象者をいくつか挙げてみました。
- 身体障害:「眼の障害」「聴覚の障害」「肢体の障害」
- 精神障害:「統合失調症」「うつ病」「認知障害」「てんかん」「知的障害」
- 内部障害:「呼吸器疾患」「心疾患」「腎疾患」「肝疾患」「糖尿病」
「○○○の病名だと障害年金を受給できる」と決まっているわけではなく、日常生活や仕事に支障が出ているのかどうかで判断されます。
そのため、症状が重い人であれば偏頭痛だけでも障害年金の対象者です。
障害年金の請求手続きができる社会保険労務士(社労士)について
病気や怪我で障害が残ってしまった時に、必要な条件を満たしていれば生きている限り受け取れる障害年金は役立ちます。
障害年金の手続きは、社会保険労務士(社労士)に依頼するのも選択肢の一つです。
「社会保険労務士(社労士)は企業の労務相談が主な業務なんじゃないの?」と考えている方は少なくありません。
しかし、障害年金の請求手続きの代行を専門的に取り扱っている社労士事務所もありますよ。
障害年金は決定までに時間がかかりますので、素早く手続きしたいのであれば社会保険労務士(社労士)への依頼も検討すべきです。
障害年金の請求手続きを社会保険労務士(社労士)に依頼した方が良い理由
障害年金の請求手続きは、そこまで複雑というわけではありません。
「初診日に年金に加入していた」「一定の障害の状態にある」「一定の保険料を納付している」という条件を満たし、下記の必要書類を用意すれば自分でも手続きできます。
- 年金請求書
- 年金手帳
- 戸籍謄本/住民票
- 所定の書式による医師の診断書
- 病歴・就労状況等申立書
- 預金通帳
- 印鑑
それでも、万全を期すならば専門家の社会保険労務士(社労士)に依頼した方が良いでしょう。
このページでは、依頼者側の立場に立って障害年金の請求手続きを社会保険労務士(社労士)に依頼すべき理由を説明していきます。
初診日の確定が難しい
障害年金を受給するに当たり、初めて医師や歯科医師に診てもらった日が初診日になります。
初診日当時の年金制度から障害年金が支給されるため、いつ医師や歯科医師に診てもらったのかは重要ですね。
しかし、傷病のきっかけが15年前の出来事でカルテも残っていない状態だと、初診日を確定するのは簡単ではありません。
「どこの病院で治療を受けたのかわからない」「何年前の出来事なのか記憶に残っていない」というケースが多いので、社会保険労務士(社労士)への依頼が役立ちます。
社会保険労務士(社労士)に相談すれば、最初に治療を受けた病院の探し方のノウハウを教えてくれたり、それなりの書類を作成したりといったサポートをしてくれるのです。
つまり、初診日からあまりにも時間が経ちすぎている場合は、社会保険労務士(社労士)に問い合わせて障害年金の手続きを代行してもらうことで、スムーズに手続きが進みます。
精神障害は数値で明確に判断できない
精神障害を患っている方は、数値で障害年金を受給できるのか明確に判断できません。
身体障害は検査によって明確に数値が出ますので、精神障害とは違うことがおわかり頂けると思います。
多精神疾患の症状の判断は本人や医師の主観で決まる部分が多いため、障害年金を受け取れるのかどうかは次の2つの書類の書き方で左右されやすいのです。
- 所定の書式による医師の診断書
- 病歴・就労状況等申立書
障害年金の申請に慣れている社会保険労務士(社労士)は、病歴・就労状況等申立書の書類の作成でどう記述すれば良いか知識と経験を持っています。
医師が作成する診断書にしても、「○○○を詳しく書いてもらうように」と事前にアドバイスしてくれますので、障害年金の審査に通る確率はアップするでしょう。
精神疾患は実際の症状よりも軽めに診断書を書かれると障害年金を受給できませんので、社会保険労務士(社労士)の力が必要です。
社会保障費の削減で審査が厳しい
少子高齢化が進む日本では、社会保障費を削減する目的で次の対策を行っています。
- 老齢年金の受給開始時期を遅らせる
- 高齢者の医療費負担の割合を増やす
その影響もあり、障害年金の審査に通りにくいのが現状です。
上記の項目でも説明しましたが、自分で手続きするよりも社会保険労務士(社労士)に依頼した方が障害年金を受給できる確率は上がります。
あれこれと迷いながら進めるよりも、社会保険労務士(社労士)に任せた方が圧倒的に楽です。
障害年金の請求手続きで社会保険労務士(社労士)がもらえる報酬は?
これから社会保険労務士(社労士)を目指す方は、障害年金の請求手続きでどのくらいの報酬をもらえるのか気になりますよね。
障害年金の請求手続きに限った話ではないものの、社会保険労務士(社労士)の報酬は自由化されています。
従来までは全国社会保険労務士会連合会の報酬基準をもとにして、各都道府県の社会保険労務士会が「○○○は△△△円」と報酬の基準額を定めていました。
しかし、現在では社会保険労務士法の改正に伴って規定部分が削除されたため、各社労士事務所が自由に報酬額を決めているわけです。
それでも、多くの社労士事務所では自由化される前の報酬額を基準にして企業やクライアントに業務を提供しています。
以下では、年金の申請手続きで社会保険労務士(社労士)がもらえる報酬の目安をまとめてみました。
- 初回の相談料:無料
- 着手金:無料
- 年金申請手続き報酬:「年金額の2ヵ月分」「初回支給額の10%」「10万円」のどれか
- 医療機関への書類の提出や同行:1万円+担当社労士事務所等から往復交通費
- 職務上請求による役所での住民票等の取得:5,000円+担当社労士事務所等から往復交通費
- 更新申請:更新年金額の1ヵ月分
- 再審査請求:着手金8万円+「年金額の3ヵ月分」または「初回支給額の20%」
ほとんどの社労士事務所では、障害年金の請求手続きにおいて着手金を無料に設定し、年金が振り込まれた後に支払うやり方を取っています。
仮に年金が不支給だったケースでは、依頼者から報酬をもらうことはありません。
社会保険労務士(社労士)の資格を活かして開業社労士を目指す方は、報酬をどのように設定するのかしっかりと考えるべきです。
※社労士の業務全般における報酬相場については、下記の記事も参考にしてください。
社会保険労務士(社労士)が仕事を獲得するには?
開業社労士の場合、自分から積極的に新規顧客を獲得しないといけません。
そこで、社会保険労務士(社労士)が仕事を獲得するに当たって押さえておきたいポイントをいくつか紹介していきます。
- 「障害年金に強い」「建設業に強い」「助成金ならお任せ」と自分の事務所の強みをアピールする
- Web(ブログやTwitter)を使って集客して見込み客発掘からクロージングまでを効率化する
- しっかりとWebマーケティングを実施して有効なブランディングをする
- スムーズかつスピーディな対応を心掛けて素早く動く
障害年金は事後重症請求だと、申請が遅れるほど損をします。
つまり、社会保険労務士(社労士)はお客様に対してスピーディーな対応を心掛けないといけません。
少しずつ実績を積み重ねることにより、信頼を勝ち取って仕事が増えていきます。
まとめ
以上のように、社会保険労務士(社労士)の障害年金の請求手続き業務についてまとめました。
障害年金の受給手続きは自分では意外と難しいので、専門家の社会保険労務士(社労士)に依頼する方は増えています。
これから社会保険労務士(社労士)の資格を取得して独立開業する予定の方は、障害年金に関する業務も検討してみてはいかがでしょうか。