会社や個人事業を運営していくのはとても大変なことで、様々な困難があります。
中でも、開業資金の調達や資金のやり繰りで悩む事業者は多いのではないでしょうか。
そのような会社や個人事業主を応援する制度の一つが助成金ですね。
今回の記事では、助成金の詳細や申請業務について、分かりやすく説明します。
助成金の申請について簡単に解説!
助成金とは簡単に説明すると、厚生労働省が管掌している雇用に関連した支援金を指しています。
金融機関からの融資とは違い、助成金を申請して要件を満たしていれば返済不要のお金が事業者に支給される仕組みです。
以下では、代表的な助成金の種類をいくつか挙げてみました。
- 雇用に関するキャリアアップ助成金:有期契約社員を正社員に転換した場合に支給される
- 社員の教育研修に関する人材開発支援助成金:正社員にスキルアップが目的の研修を受けさせた際に支給される
- 働き方改革に関する人材確保等支援助成金:従業員が働きやすい職場環境を作る整備を行った際に支給される
- トライアル雇用助成金:ハローワークを通じて有期雇用をした際に支給される
- 特定求職者雇用開発助成金:就職が難しい障害者や高齢者を雇用した際に支給される
どの助成金も労働関係の法令に違反がなく、厚生労働省が認めた事業所だけに支給されます。
※社会保険・年金・雇用保険などの未払いがある事業所はNGとなります。
返済不要のお金が支給されて資金のやり繰りができる以外にも、会社の信用アップに繋がるのが助成金申請のメリットです。
助成金と補助金の違いは?
「助成金と補助金は同じもの」とイメージしている方は少なくありません。
確かにどちらも会社や個人事業に対してお金が支給されますが、助成金と補助金には次のような違いがあります。
- 助成金は厚生労働省の管轄で、要件を満たしていれば給付される
- 補助金は経済産業省や地方自治体の管轄で、内容の審査の結果、採択されたもののみ給付される場合がある。
助成金も補助金も、申請してすぐに取得するのは難しい点には要注意です。
助成金の申請は社会保険労務士(社労士)の独占業務なの?
社会保険労務士(社労士)の業務内容は次の4つに大きくわけられます。
- 労働基準監督署や年金事務所に提出する書類の作成
- 上記で作成した書類の提出手続きの代行
- 法令に基づく申請や届け出などの事務代理業務
- 顧客企業に対する人事・賃金制度などの導入支援やコンサルティング
助成金の申請の手続きは、社会保険労務士(社労士)が行える代表的な業務です。
一般的な補助金の申請代行は社会保険労務士(社労士)だけではなく、行政書士や中小企業診断士といった士業の資格をお持ちの方もできます。
しかし、厚生労働省の助成金は社会保険労務士(社労士)しか受任できない独占業務です。
具体的に社会保険労務士(社労士)が行える助成金申請の独占業務をいくつか見ていきましょう。
- キャリアアップ助成金
- トライアル雇用奨励金
- 65歳超雇用促進助成金
- 労働移動支援助成金(再就職支援奨励金)
- 中小企業障害者多数雇用施設設置等助成金
- 建設労働者確保育成助成金
- 労働時間等設定改善推進助成金
- 退職金共済制度に係る新規加入等掛金助成金
人や労働に関する助成金の申請は、社会保険労務士(社労士)の有資格者のみが行える業務内容というわけですね。
助成金の申請には面倒な手続きと長い期間がかかりますので、どうすれば良いのか戸惑っている事業者は少なくありません。
そのような方を徹底サポートする有資格者が社会保険労務士(社労士)です。
たとえば、雇用関係助成金の受給にあたっては、必ず就業規則や法定三帳簿(出勤簿・賃金台帳・労働者名簿)、雇用契約書等の必要書類を適切に備えていることが必要です。
このような書類の作成・整備は社労士の専門分野ですから、仮に助成金の申請が社労士の独占業務ではなかったとしても、社労士に依頼したほうがスムーズにいくことは理解できるかと思います。
社会保険労務士(社労士)以外に助成金の申請を代行してもらうリスク
一口に社会保険労務士(社労士)と言っても様々な仕事がありますが、助成金の申請を中心に取り扱うのは、有力な選択肢の一つ。
助成金の申請を考える会社は多いので、同時並行で何社もサポートしている社会保険労務士(社労士)も多くいます。
実は、依頼者側の立場に立ってみると、自分で申請をしたり、社会保険労務士(社労士)以外に助成金の申請を代行してもらうリスクはかなり大きいのです。
ここでは、一般企業が自社で助成金を申請したり、社会保険労務士(社労士)以外に助成金申請の代行を依頼することに対するリスクについてまとめてみました。
- 多少の知識や経験を持っていても申請するには多大な時間と労力が必要になる
- 申請書の記入が複雑で、申請して記入事項に不備があると助成金を受給できない
- 不正受給を勧めてくる悪質なコンサルティング会社に騙されることがある
コスト削減のために自分で助成金を申請しようと考えている方はいますが、毎年たくさんの種類がありますので自社に最適な助成金を選ぶのは決して簡単ではありません。
しかも、助成金の申請は非常に複雑ですので、手続きに時間を取られるのは勿体ないですね。
現在では助成金申請を勧誘するコンサルティング会社が増えているものの、中には単なるお金儲けと考える悪質業者も存在します。
悪質な業者に騙されると不正受給で罰則を受けたり着手金を支払った後に放置されたりするリスクがありますので、社会保険労務士(社労士)に依頼すべきです。
助成金の申請を社会保険労務士(社労士)に依頼するメリットは?
ここでは依頼者の立場に立ち、助成金の申請を社会保険労務士(社労士)に依頼するメリットをいくつか挙げていきます。
助成金の申請に関する適切なアドバイスをしてくれる
助成金は公的融資とは違い、返済義務がありません。
事業者にとっては何よりも嬉しいことですが、助成金は企業や業種によって効果が大きく異なります。
申請しても十分な恩恵を受けられないケースも多いのですが、社会保険労務士(社労士)に依頼すればその心配はありません。
社会保険労務士(社労士)は法律に詳しい専門家ですので、助成金の申請に関する適切なアドバイスをしてくれます。
「今の会社に必要な助成金は何なのか?」「どの助成金を申請するとメリットが大きいのか?」との疑問に答えてくれるわけです。
十分な情報を得てから助成金を申請したいのであれば、社会保険労務士(社労士)に相談してみましょう。
面倒な助成金の申請手続きを任せられる
面倒な助成金申請の手続きを任せられるのは、社会保険労務士(社労士)に依頼する大きなメリットです。
助成金の種類によって変わるものの、申請の大まかな流れをまとめてみました。
- 適用条件を確認して申請する助成金を決める
- 計画書を作成して提出する
- 計画の内容に沿って実行する
- 計画期間が終わった後に助成金を申請する
- 申請してから1ヵ月~2ヵ月で支給・不支給が判断される
社会保険労務士(社労士)に任せられるのは、「①」「②」「④」の3つですね。
申請書類も多いので、事業主が自ら申請するのは、かなり大変です。
助成金の申請を依頼を進めながら、採用や職場の人材活用などの相談ができる点もメリットですね。
助成金をもらい損ねるリスクがない
社会保険労務士(社労士)に助成金の申請をすると、もらい損ねるリスクがありません。
下記に該当する会社や個人事業主は、助成金が支給されませんので注意が必要です。
- 労働保険に未加入、または加入漏れがある
- 残業代が未払いで適正な労働時間の運営がされていない
- その他の何かしらの法令違反がある
法令順守やスケジュール管理、労務管理のサポートを社会保険労務士(社労士)が行ってくれますので、自分で手続きするよりも失敗が遥かに少なくなります。
本業に専念できる
本業に専念できるのも、社会保険労務士(社労士)に助成金の申請を依頼するメリットです。
営業や開発とは違い、「助成金の申請」「総務や労務の仕事」は会社の売り上げに直結しません。
しかも、助成金の申請は手続きがかなり複雑ですので、余計な時間がかかります。
社会保険労務士(社労士)に委託すれば、その時間を本来の業務に専念できるわけです。
手続きの依頼で社会保険労務士(社労士)に支払う報酬はありますが、結果的に会社の売り上げアップに繋がるのではないでしょうか。
助成金の申請の依頼を受けられる社会保険労務士(社労士)になるには?
これから社会保険労務士(社労士)を目指す方のために、助成金の申請の依頼を受けられる有資格者になるにはどうすれば良いのかまとめてみました。
助成金の種類によっては受給額が大きいので企業のニーズは高く、助成金業務の将来性は期待できます。
社会保険労務士(社労士)にとっての重要な業務の一つですので、一度目を通しておいてください。
- 助成金分野の中でも、「創業系が得意」「教育訓練系が得意」「育児や介護系が得意」と得意分野を作る
- 助成金の申請手続きに関する業務を中心に行って実績を作る
- 助成金のメリットに加えてリスクについてもクライアントに詳しく説明する
- 助成金や補助金を受給できるまで何度も相談に乗って親身に対応する
「この人にお願いしたい!」と思われるような社会保険労務士(社労士)を目指すのが重要です。
そうすれば助成金の業務だけではなく、経営者や総務部長と懇意になって労務顧問の依頼を受けたり別企業の社長に紹介されたりと仕事の幅は広がります。
独立した社会保険労務士(社労士)は特に、自分から積極的に仕事を獲得する努力が必要だと心得ておいてください。
社会保険労務士(社労士)の助成金の申請業務の報酬はどのくらいなの?
社会保険労務士(社労士)の助成金の申請業務でどのくらいの報酬がもらえるのか、気になっている方も多いでしょう。
独立開業した社会保険労務士(社労士)は依頼を受ける仕事の種類だけではなく、報酬の設定も独自に行う必要があります。
事務所によって違いますので一概には説明できませんが、助成金の申請業務の報酬の目安をまとめてみました。
- 社会保険労務士(社労士)への初回の相談:無料
- 助成金の申請代行を約束する着手金:2万円~5万円
- 助成金の申請が無事に通過した時の成功報酬:助成金額の10%~30%
着手金は依頼の成功の有無に関わらず顧客からもらう報酬、成功報酬は依頼が成功した時にもらえる報酬です。
着手金が無料の社会保険労務士事務所は成功報酬が高く、着手金を取っている社会保険労務士事務所は成功報酬が安い傾向があります。
事務所を運営する上で仕事の報酬を設定するのは大事ですので、相場からかけ離れない程度に設定しましょう。
あまりにも報酬が高すぎる社会保険労務士事務所は、顧客やクライアントからの依頼を受けられなくなりますので注意してください。
※社労士の業務全般における報酬相場については、下記の記事も参考にしてください。
まとめ
社会保険労務士(社労士)の業務内容の一つである助成金の申請についておわかり頂けましたか?
助成金を受給したい企業や会社はたくさんありますので、社会保険労務士(社労士)の業務の中でも助成金の申請代行はニーズがあります。
依頼者の立場に立ってみると助成金の申請を専門家に依頼するメリットは多いので、この分野に特化した社会保険労務士(社労士)を目指してみてください。